先日、老後資金に関するワークショップをやっていたら、既に年金を受給していると思しきご婦人が、「ムスコには、『どうせあんたたちの頃には年金なんてもらえないから、年金なんて掛けんでええ』と言っている。タンス預金のほうが何ぼか得だわ」とおっしゃっいました。すると、「うちも!」「うちもそう言ってる」「かけ損だわね~」と複数のご婦人から賛同の声。
そうだったのか。最近、年金を払わない若い人が増えていると聞くけれど、その背景にはこうしたお母さまたちのアドバイスがあったのか・・。目からウロコの出来事でした。
公的年金制度の土台が揺らいでいるのは事実。少子高齢化の日本で、ピラミッド型の人口構造を前提とした今の制度はたしかに危ういといえるでしょう。しかし、耳に入る断片的な情報だけで判断してしまうのも危険です。
社会保障制度である年金を、損得だけで捕らえるのは邪道ですが、ここではあえて、個人の損得勘定で考えてみたいと思います。
公的年金の1階部分にあたる基礎年金には、国庫負担(税金)も1/2入っています。そのため、税金を払っている人が、保険料を払わずに無年金になるのは損と言えるでしょう。また、年金の給付は老齢年金だけでなく、障害年金や遺族年金もあります。その保障を民間の生命保険で賄おうとすれば、保険料は相当な額になり、年金に加入しているほうが有利です。
そもそも、日本の年金制度は賦課方式。子ども世代が払う保険料で、今の高齢者の年金を賄っているのです。保険料を払わない人が増えて、本当に制度が破たんしてしまったら、昔のように、子どもが親の老後をみなければならなくなる。危ないからイチ抜けたというのではなく、社会全体で高齢者を支えるこの大切な制度をどうすれば維持できるか、真剣に議論することが大切なのではないでしょうか。